プラトニッククラウド

昨日の事を言うと、鬼が寂しげに微笑む。

21. 声と告白

自分についてのコンプレックスはあまたあるが、最も大きいものは何か自問してみると、声だと気づく。声が最大のコンプレックスだなんて、他にあまりコンプレックスがないのかと思われそうだが、そうではない。内面・外見至るところに劣等感を抱えてはいるが、世界で一番自分が劣っていると思う項目は声だけである。

録音された自分の声の醜悪さには、誇張なしに耳を塞ぎたくなる。誰しも、普段は骨伝導で聞こえている自分の声を、録音媒体などによって空気伝導で聞くと違和感があるらしいが、私の場合は違和感ではなく嫌悪感が発生する。普通に話している分には何も感じないが、何かの拍子に録音された自分の声を聞くと、こんな醜い音を自分は平気で発しているのかと死にたくなる。

ここまで強いコンプレックスだと、人に言えない。自分の弱みを人に言えるのは、慰めて貰える算段があるときだけだ。誰かにコンプレックスを打ち明けて楽になりたいとずっと思ってはいるが、私の声の聞き苦しさを冷静になって再認識した相手の顔を想像して、その願望を捨て去る。フラれる覚悟がなければ告白は出来ない。仕方なく、私の声を知らない人にそっとこの劣等感を打ち明ける。