プラトニッククラウド

昨日の事を言うと、鬼が寂しげに微笑む。

12. 敬語と懐刀

「敬語が板についてる」今日言われた言葉だ。色々あってずっと年上の人と関わる機会が多いため、19歳にしてはナチュラルに敬語で話せる方かもしれない。とは言っても、20年近く日本で生活してきて、まともに敬語が使えないなんてことは、そうそうなかろう。
どんなコミュニティに居るにせよ、敬語は必須スキルとして顔を出してくる。否が応でもというやつだ。タメ口で通すことも出来ないことはないだろうが、ムッとする人は必ずいる。自分がその1人になる可能性だって否定できない。そこまで人間が出来てはいない。同い年だろうが同期だろうが、初めは丁寧語が基本だ。打ち解けるうちにぎこちなく「です」「ます」が剝がれて、やがて完全なタメ口になる。
だから、普段関わる人の中でお互いにタメ口を使う人の割合はかなり少ない。それは信頼感のメルクマールだ。鍵を開けて家の中に招き入れるに等しい。懐刀で刺されたら終わりだ。それ故、敬語を解除すること、それを認めることにはかなり気を遣う。冒頭の台詞を言った彼には今日からタメ口で話すことになった。2ヶ月越しだ。