6. 終電とビール
今日は友人の誕生日を祝った。旧知の仲ではあるが、ちゃんとお祝いしたのは初めてな気がする。心を込めてお祝いした相手が、本当に喜んでくれるのは嬉しい。日付が変わって20歳になるまでしみじみと祝い、お酒を飲むところを見届けたらそそくさと終電に間に合うように抜け出した。彼は初めてのビールを美味しそうに飲んでいたなぁと少し回想する。
終電間際の電車は乗ったことがあるが、終電は実は初めてだった。これに乗れなかったら帰れないなぁと思いつつ乗りはするが、別段感慨もない。飲み終わったストロングゼロをポケットに入れたおじさんが不機嫌そうに立っている。片手に吊革・片手にクリアアサヒを握った若い男が気怠げにしている。恐らくぬるくなったであろうビールが、終電の床に溢れそうになる。